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福袋マーケティング

by 夢喰

 余りものには福(服)があるとは良く言ったもので、年末セールの売れ残り品を処分価格で福袋に詰め込むのは、小売業の常套手段だ。相手は中身を見ずに買ってくれるのだ。どうせ処分しなければならないものである事を考えると、中身の8割を占める色物を8割引で、一応誰もが満足する奴を3割引で売って十分に元がとれる。
 しかし、今では福袋市場も飽和して、新興ショッピングモールは独自の工夫が必要となる。イオンのような知名度・安心感や、デパートのような高級感・稀少価値感がないからだ。専門店連合で福袋を作る際にどれだけユニークな組み合わせが出来るかが鍵になる。そこで私の勤める当モールでは、ある試みを数年前に始めた所、今では一頭地抜ける事に成功した。
 もはや企業秘密でもなくなってしまったその工夫とは、男子高校・大学生向けの袋に、女物の服を
「これは服=福です」
というカードと一緒に1枚だけ紛れ込ませたものだ。元々は、売れ残りの服が、男物より女物が圧倒的に多くて、その処分に困ったあげく、コスプレ予備軍に回せばよいかも、という軽い考えで始めたもので、工夫とは到底いえないし、世が世であれば顧客を失う可能性すらあった。しかし、今はフェチの時代だ。本人が着る為でなく、異性を身近に感じるための観賞用として服が売れる。だから賭けてみたのだ。
 顧客を失う可能性も考え、最悪プレゼントとして使える様に、最初の年は、スカート・ワンピース・刺繍付きブラウス・キュロットのいずれか一点に限った。ガールフレンドへの贈り物でもよし、観賞用でもよし、あるいは故コスプレ用でもよし。
 しかし、世の中の隠れたニーズは私の予想をはるかに超えていた。人気が衰えないどころか、2つ3つ買っていく者まで現れたのだ。そこで、3年目からは下着もランダムに入れるようにしたら、とうとう、福袋の中で一番はやく売り切れるようになってしまった。
 そして今年。
 女の子向けの福袋コーナーを覗いた私は驚いた。若い女の子の並びのなかに、男物の福袋にいれた服を着ている子が複数いる。妹さんにでもあげたのか、それとも本人なのか。本人だとしたら男の筈だが、とても男には見えない。
 素晴らしい。なんたって、服なんかに金を使わない筈の男の子が、確実に金を落としてくれているからだ。服屋にとって女の子は上客だ。それに女装趣味の男の子が加わるのだから。
 以来、私は売れ残りの女性服、女性下着を
「間違っていれたおまけ」
を装って、若い男の子に配っている。捨て値で売るより、確かに将来に向けた販拡となるからだ。もっともっと、男の子が可愛い服に興味を持つように!


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