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公民の時間です

by 夢喰

今日は男女共同参加の単元です。

21世紀になって、日本の男女平等が問題になって来たことは1年生の時に習いましたよね。先進国を意味するOECDランキングがどんどん下がって、そのうち世界ランキングまで下の方になってしまいました。それでとうとう国連決議で日本が名指しで非難されるようにさえなってしまったのです。

あー、この非難ですが、アジア・アフリカ諸国からは「日本はいつまでも手本になって欲しい」という気持ちで決議案に賛成したという弁明もありました。確かに日本は色々な意味で「非白人国家の手本」と思われています。手本なのにそれにおごらずに、常に「文句」を言って改善しつづける国とも思われています。皆さんも、今の評価におごらずに、常に文句を言い続けましょう。

さて、この決議案に対して、コミケ代表から「見なし女性」という制度を取り入れてはどうかという提案がありました。

(中略)

そもそも、女性として生活している生物学的男性を「共同参加」の女性枠に入れることには問題ありません。前世紀には女性への性転換手術をした人ですら男性として扱っていましたが、2010年までには、先進国の大半が、性適合手術を受けている元男性を法律上女性と見なすようになり、20XX年までには手術を受けていなくても「心が女性」であれば男女共同参加という枠の女性と見なすのが常識となりました。

でも、心が女性というのは何をさすのでしょうか? 同性愛が認められる現代では、男性であるという条件がなくなっています。一方で、心も性的役割も女性で、恋愛対象が男性なのに、性適合手術を「誤摩化し」と感じて受けていない人もいます。手術では本当の意味での性転換が出来ないから当然でしょう。

つまり「心が女性」という定義は曖昧なのです。一方で、社会的に異なる性別を振る舞うことを許容する人々がいます。男子校にある「お姫様」の役割とか、宝塚などにある「男役」です。彼ら彼女らの多くは、これらの役割を努め、かつその後、普通に生物学的異性と結婚しています。となれば、日常的に女性の格好と振る舞いをしていれば良いのではないか、いう意見すら出るようになりました。

その矢先の非難決議でした。そこでコミケが提案したのは、24時間女性でなくても仕事場での服や仕草が女性であれば、女性と見なして良いのではという提案があった訳です。

たまたま政権交代したばかりの政府は、これを新政策の目玉にしようと、「見なし女性の管理職登用」キャンペーンを張りました。その結果、官公庁を中心に、女装した課長や部長が現れるようになりました。ただし、世界の目を気にしますので、ある程度優秀な者のうち、女装の似合う者だけを登用しました。

その後、企業の新卒にも女装をする者が増え、その結果政権は再交代したあとも、この流れは止まりませんでした。今では「見なし女性」のお陰で、日本の男女共同参加度は世界一です。

でも、もちろんそれに対する「水増し」非難がありました。それはどう見ても男性体型にしか見えない人の女装や、女性の顔に見えない人で、女性に見えるように化粧で努力するのを怠った人です。彼らは出世の為だけにスカートを履き、会社や政府はそれを黙認したという非難です。

そこで、その対応の為に「美女」と見なされるような女装以外は見なし女装から外されるようになりました。特に結婚している人の場合、パートナーよりも女性っぽく見えるというのが条件になりました。

ところが、そうなると、平等の問題が出てきました。人によっては体格的に、たとい心が本当に女性であっても見なし女性と見なされなくなる問題です。その解決のため、今では体格矯正の公的カウンセラーもいます。

そういうわけで、小中学校でも、将来「見なし女性」を目指す男子の為の特別講習が保健の時間に開かれるようになりました。あ、その時間、女子生徒は生理や出産の講習ですね。だから皆さんももうご存知だと思います。

そこで、誰かにこれを実践してもらおうと思いますが。

え、恥ずかしい?

そんなこと言ってたら出世できませんよ?


----- おまけ:(中略)された部分 -----

……「見なし女性」という制度を取り入れてはどうかという提案がありました。

ここで少し性的マイノリティーの説明をしましょう。

皆さん、もう中学3年生ですから、恋愛という意味で好きな人がいる人も多いですよね。話すとドキドキするとか、手を握りたいとか。実際に付き合ってるカップルもあるって噂は先生の耳にも入ってきてますよ。でも、ちゃんと節度をもって、手をつなぐのはいいけど、キスは高校まで我慢ね。一生出来ない人もいるかも知れないけどね。

(ここでクラスからざわめき、半分が顔を赤らめる)

はい、静かに。この付き合う相手って普通は異性ですよね。でも、性的マイノリティーの場合、これが異性とは限らないのです。そう、もう皆さんの多くが知っていると思いますが、心の性別と肉体の性別が一致しない人々や、恋愛の対象が自分の性別と異なるとは限らない人々です。

性別の不一致の一番多い例は、自意識が女性で対象が男性であるような生物学的男性と言われています。いわゆるゲイの方々ですね。昔は同性愛、いわゆるホモの方々、と同じく括りにされて差別されていましたが、21世紀にはいると次第に社会的に認められるようになって、その違いも明確になってきました。それにつれてゲイとかホモとかいう呼び方も、昔は差別用語とかいう訳の分からないタブー扱いだったのですが、今では普通の呼び方になっています。

呼び名はともかく、心と肉体の性別が一致しない人々は、同性愛とは区別されるようになりました。というか、その区別の為に「心の性別」と「肉体の性別」という概念が生まれました。20世紀末のことです。

大抵の人は「心の性」と「肉体の性」が一致しているけど、これが一致しない人がいる、という風に考えるようになったのです。これは「恋愛対象が同性」というのと異なっていますよね。でも20世紀後半までは、この区別が曖昧でした。ゲイの方々の多くは恋愛対象が男性で、かつ性的役割が元々女性だったから、傍目からは区別がつかなかったのです。

「心の性」と「肉体の性」という考え方は直ぐに世界中で受け入れられました。なぜなら、ゲイはモテる男性がストーカー被害を受けることはあっても、男の子が強姦されることがないからです。そして、これを解決する為に、肉体を見かけだけでも心の性別に近づける性適合手術まで社会的に認められるようになりました。実は、それまでは、この性適合手術が違法だったのです。

何故違法だったかですが、、、これ答えられる人?

はい、そうです。先日習った優生保護法の為ですね。だから、性別不一致の人は、我慢して生きるか、あるいは闇や外国で、その種の手術を受けていた訳ですが、そういう闇行為は感染症など健康上の問題や、闇ブローカーから反社会組織の資金源になるという問題を起こします。なので合法にすべきだという流れで、そのために「性適合手術」という言葉が生み出されたのです。俗にいう性転換手術ですが、胸に異物を入れて、男性器を切り取り、その跡にピアスのような穴を開けるだけの手術ですので、反対の性になるわけでなく、生物学的には男のままです。ですが、こういう手術を施すことで戸籍上は女性と登録できます。

つまり、生物学的に男であっても、社会的に女性と認識されるわけです。これは人間社会だけの特徴で、しかも近代だけの特徴です。ですから国によっては受け入れ度が異なりました。実は日本でも20世紀までは、このような手術を行なっても男性扱いで、例えば麻薬犯罪で捕まったカールセル真紀という人は、見た目は肉体すら手術で女性に近づけましたが、それでも男性用の牢屋に入れられています。

こういう経緯から、性適合手術を受けなくても本人の性自認も女性で、社会的にも女性として振る舞っている場合、男として分類するわけにはいかないという流れになりました。当然ですよね。

そこで本題に戻ります。

そもそも、女性として生活している生物学的男性を「共同参加」の女性枠に入れることには……


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